摂食嚥下
リハビリテーション

「食べられない」から「食べられる」へ

安全に口から食べる
ためには、
口腔の機能を
高める必要があります

口腔ケアはただの歯磨きだと思っている人が多いようです。歯磨きは大切ですが、それだけでは十分とは言えません。
歯科衛生士が行う専門的口腔ケアは口の粘膜を拭いたり、舌の運動をさせたりして、口の中の細菌を減らしながら、同時に「口の力」を上げていきます。
安全に口から食べるためには、口腔の機能を高める必要があるのです。
上半身の運動や口腔マッサージ、専門的口腔ケアなどの摂食機能療法を行うことによって機能回復を目指します。こうして口を整えることによって、徐々に「食べられないお口」が「食べられるお口」へと変化していくのです。

嚥下の状態を検査し、リハビリテーションや口腔ケアなどの治療を行う「摂食嚥下リハビリテーション」において、重要な役割を担うのが嚥下内視鏡検査です。
嚥下内視鏡検査を実施すれば、食べ物がどのように咀嚼され、嚥下されているかを直接目で見て確認し、的確な治療計画を立てることができます。
訪問歯科においては、ポータブルの嚥下内視鏡を用いて、在宅など患者さんが生活する場所で嚥下検査を行っています。
摂食嚥下リハビリテーションでは口腔だけでなく咽頭や食道の入り口まで診ますし、認知症や栄養についての知識も求められます。

摂食嚥下リハビリテーションの流れ

摂食嚥下リハビリテーション の流れについて

嚥下スクリーニング → 嚥下内視鏡検査 → 摂食機能療法というのが、摂食嚥下リハビリテーションの基本的な流れです。
嚥下スクリーニングで基本的な嚥下機能を評価し、誤嚥が疑われるなど重篤な場合は嚥下内視鏡検査で精査します。
診断と評価に基づき、治療計画を立てます。
治療は、上半身の運動や口腔マッサージ、専門的口腔ケアなどの摂食機能療法が中心となります。
これらを3か月程度行い、機能回復を再評価します。

嚥下内視鏡検査のメリット

  • 喉の中を直接診るため、
    嚥下機能の診断が容易です

    嚥下内視鏡検査はファイバーを鼻から喉に入れます。喉の中を直接診ることができるので、嚥下機能の診断が容易です。
    また、在宅や施設で、普段の食事を食べていただきながら行うので、日常生活に即した評価がしやすいメリットもあります。
    嚥下がうまくできていない場合は、食べ物の固さや水分のとろみを調整し、その場で最適な食形態を判断できます。

  • 患者さんに適した食事姿勢を決めることができます

    嚥下機能の低下した方は、少しリクライニングした姿勢を取ると、食べやすくなる場合があります。
    患者さんが実際に食べている場所で、リクライニングの角度を調節できるのもメリットです。

  • 映像を介護担当の方に見てもらうことができます

    嚥下内視鏡の検査では、映像を医療者だけでなく介護を担当する方に見てもらうことができるのも大きなメリットです。
    安全な食事や介助の方法について、医学的根拠を示すことができますので、説得力があります。

今後、嚥下内視鏡検査の
必要性が増していく理由

  • 在宅でできる嚥下の画像検査

    嚥下の画像検査は病院で行われる嚥下造影検査(VF)が一番ポピュラーな検査です。しかし、VFは病院に設置されている機械ですから、病院でしか行えないのです。
    現在は病院に行けない高齢者が増えていますが、訪問診療で嚥下評価をしてくれる医師はあまりいません。
    その点、歯科医師による訪問歯科診療では患者さんをご自宅で診ることが可能です。
    在宅でできる嚥下の画像検査が嚥下内視鏡なのです。

  • 嚥下内視鏡検査の効果

    診断の精度がかなり上がります。嚥下内視鏡検査を行わず、飲み込みの音を外から聞くだけだと、喉の中で何が起こっているのか分からない場合がありますが、嚥下内視鏡検査だと分かることが増えるのです。
    正しい診断をした上でリハビリを行うと、効果が向上します。ですから、診断はとても大切なのです。

嚥下内視鏡検査が必要な
患者さんとは

  • 誤嚥性肺炎を繰り返している
  • 体調を崩して入院し、入院中に医師から経口摂取を止められた
  • 経鼻栄養や胃瘻などで経口摂取ができない

こういった状態になりますと、
ご本人のみならず、ご家族からも
「もう一度、口から食べられる
ようになりませんか」
と検査を依頼されます。

入院中は食べられなかった方でも、退院後に回復してくる方もいます。
退院後に、再び口から食べられるかどうかは判断が難しいため、私ども歯科医師が嚥下内視鏡検査の結果を医師に報告することで、「食べる練習」という形で経口摂取の再開に繋がります。
飲み込みの音を聞いたり、喉の動きを外から見るだけでは根拠としては弱いでが、嚥下内視鏡検査の画像診断は客観的な根拠となります。

※複数の疾患のある患者さんが多い場合、嚥下内視鏡検査をする場合は主治医に嚥下内視鏡検査を行うための許可をいただいてから行います。

誤嚥は喉が原因で起きているとは限りません

誤嚥は喉が原因で起きていると思われがちですが、実際は口腔の状態が悪かったり、口が整っていないことが原因であることも少なくありません。
そこを見過ごして、喉ばかりを診てしまうと、なかなか治らないのです。
「口を整える」と「嚥下機能を向上させる」ことは密接な関係があります。

人間は体内に食べ物を取り入れて生きています。そのために働く機能を「摂食・嚥下機能」といいます。そしてその機能に障害をきたした状態を「摂食・嚥下障害」といいます。
摂食・嚥下とは食物が認知されてから口に取り込まれ、咽頭、食道を経て胃に入るまでの全ての過程をさします。
1983年にLeopoldはこの過程を5つの期に分類しました。ここでいう「食塊」は噛んで細かくなって唾液と混ぜられ、のみこむ直前の状態になった食物のことをいいます。

摂食・嚥下障害とは
この5つの期のいずれかの場面に
異常がみられることをさします。

  • 01

    先行期(認知期)
    何をどのようなペースで食べるかを判断する時期
  • 02

    準備期(咀嚼食道期)
    食物を口に取り込み、咀嚼して食塊にする時期
  • 03

    口腔期(嚥下第1期)
    食塊を口腔から咽頭へと送り込む時期
  • 04

    咽頭期(嚥下第2期)
    食塊を咽頭から食道へと送り込む時期
  • 05

    食道期(嚥下第3期)
    食塊を食道から胃へと送り込む時期

これらの問題に対してリハビリテーションを行い、
摂食するという能力を最大限に生かして、
より安全に「食べる」という楽しみを提供できるようにするのが、
摂食嚥下リハビリテーションの試みであるといえます。

歯科訪問診療とは