歯科の豆知識

顎関節症の原因は何ですか?

 

前回は顎関節症の種類についてお伝えしましたが、どうしてこうした症状が起きてしまうのでしょうか?

 

顎関節を傷める原因には大きく5つの習慣が関わっています。

▪歯ぎしり・食いしばり

▪ストレス

▪TCH(歯列接触癖)

▪楽器演奏

▪猫背などの前傾姿勢

1つでも当てはまれば、将来的に顎関節症を引き起こしてしまうリスクがあります。こうした習慣は無意識のうちに行っていることもあるため、まずは自分がやっていないか意識を向けるところから始めてみましょう。

 

▪歯ぎしり・食いしばり

過去にも何度か掲載している歯ぎしり・食いしばりですが、これらは歯だけでなく、あごの筋肉と関節にも大きな負担をかけます。筋肉にとっては休息のない過度な筋トレを、関節にとっては人を背負ったひざ関節のように、負荷をかけ続けます。

 

▪ストレス

ストレスは筋肉の緊張をまねき、TCHや歯ぎしり・食いしばりにつながります。ストレスフリーに!とはどうしてもいかない世の中ですので、運動や趣味などでストレスを軽減、発散させる習慣を身につけましょう。深呼吸や瞑想もいいですね。

 

▪TCH(歯列接触癖)

人間はものを噛むとき以外、上下の歯のあいだはわずかに開いているのが普通です。しかし無意識のうちに上下の歯をかみ合わせていることが癖になっている人もいます。これをTCH(tooth contacting habit:歯列接触癖)と呼び、あごの筋肉の疲労や間接への過剰な負担の原因となります。TCHは顎関節症のかたの8割近くにあるといわれています。TCHは無意識の習慣ですので、直すのはなかなか難しいです。まずは自分にTCHがあるか確認し、上下の歯が当たっているのであれば、意識的に離すようにしましょう。離す習慣ができるまでは、「TCHに気を付けて!」などと書いた付箋を目につくところに貼っておくといいかもしれません。

 

▪楽器演奏や激しい運動

楽器の種類によっては、演奏が顎関節に負担をかけることもあります。バイオリンは演奏時にあごで楽器を挟むので、負担がかかります。吹奏楽器も、顎関節の弱い方向(下あごを後ろ方向)に力をかけるため、負担となります。
また、激しい運動でも歯を食いしばってしまいますので、マウスピースをするなど予防することも必要だと思います。

 

▪猫背などの前傾姿勢

下あごは、頭の骨と筋肉にぶら下がっており、ふりこのように自然にバランスがとれる位置に収まります。姿勢が悪いと、下あごは本来の位置とは違うところにぶら下がるようになり、顎関節への負担となります。

近年では、テレビゲームやスマートフォンなどを使用するときの前傾姿勢が問題視されています。仕事でパソコン作業が多い方も注意が必要です。

 

また、枕があごに当たるうつ伏せ姿勢や横寝、授業中にやりがちな頬杖なども顎に負担をかけてしまいます。このような、ついつい習慣になっている「悪い癖」も原因のひとつにつながります。

 

むし歯と同じで、傷ついた顎関節を完全に元の状態に戻すことはできません。顎関節症は急に進行するものではなく、上記のような習慣の積み重ねによって少しずつ悪化していきます。これを機に無意識だった習慣を、意識して確認されてはいかがでしょうか?