歯科の豆知識

子どものむし歯予防と食習慣の密接な関係

 

 

子供がむし歯になる三大要素「歯の質」「糖分」「むし歯菌」について詳しくみていきましょう。

「歯の質」ですが、人それぞれ生まれつき強い人もいれば、弱い人もいます。唾液の量や質によっても変わってきますが、分泌量の少ない人はむし歯になりやすいともいわれています。

「糖分」むし歯=甘いものですよね。むし歯菌は糖分が大好物!

ミュータンス菌は生まれたての赤ちゃんの口にはない菌なのですが、大人がかみ砕いた食物を赤ちゃんに食べさせたり、大人がつかったスプーンやお箸で食べさせたりすると、そこからミュータンス菌がうつってむし歯菌の繁殖につながります。

これら三つの要素と時間の経過が長ければ長いほど、むし歯になりやすくなります

■お口の中でどうなっているの?

食べ物が口に入ると、それを栄養にしたむし歯菌が”酸“を吐き出します。その酸によって、むし歯の前兆である
「脱灰・だっかい」という状態が起こります。この「脱灰」とは、酸が歯の表面の大切な成分であるミネラル
(主なカルシウム)を溶かしてしまうことです。
それを防ぐのに役立つのが正義の味方、唾液!(※1唾液について詳しい内容についてはこちら
食べ物を口に入れ咀嚼すると唾液の分泌液が増えます。この唾液の力で歯の表面がむし歯になりやすくなる酸性の状態から、むし歯になりにくくなる中性の状態に戻します。
それを「再石灰化・さいせっかいか」といいますが、人は食べ物を口にする度これを繰り返します。
このとき、間食が多くいつも口のなかに食べ物が入っている状態だと再石灰化が進まず、むし歯菌が増殖して、むし歯街道まっしぐらになってしまうのです。

 

上の図をみてください。食べ物を口にしてから酸性に傾くまでの時間は、3~5分と短いのに対して、中性になるには20~30分かかります。

脱灰の回数、つまり食事の回数がむし歯のなりやすさに関係しているのです。

子供さんは、そのなかでも特に「おやつ」の食べ方が重要になってきます。

 

■子供の「むし歯予防の三か条」

1、おやつの時間を決めましょう。

子供は体が小さいので、1回の食事で食べられる量も少なく、子供が必要とする栄養が三度の食事では摂りきれません。
そのため、おやつでおぎなう形になるので、子供にとっておやつは「食事」に値します。砂糖や油が多い食べ物(ケーキ、パン、スナック菓子など)は
お米などに比べて満腹感が得られにくいこともあります。

「どう食べるか(食事回数)は「何を食べるか」で決まってきます。

理想のおやつは、おにぎり、サツマイモ、ジャガイモ、とうもろこし、果物、干し芋、せんべいなどです。
だらだら食べることを避けるためにも、脱灰の時間を減らし、再石灰化の時間を伸ばすことを目的として、おやつは「メリハリのある与えかた」をしてあげてくださいね。

 

2.夕食前の1時間は飲食しない

夕食前に飲食をすると、血糖値が上がり満腹感を覚えます
      ↓

夕食をあまり食べることができない
      ↓

夜寝る前に小腹がすきます

      ↓
寝る前の間食につながり

      ↓

むし歯ができやすくなり、朝お腹が空いてなくて朝食を十分に食べられないことに。

こんな悪いサイクルにあてはまらないように気を付けてくださいね。

3.甘い飲み物を冷蔵庫に買い置きしないようにしましょう
気軽に飲ませていませんか?清涼飲料水や乳酸菌飲料。

市販されている清涼飲料水にはおどろくほど糖分が多いのです。

炭酸飲料水500mlに角砂糖15個分、有糖タイプの200mlの缶コーヒー1缶には、実に15グラム前後の砂糖が!
さらに、果物のジュースには果糖と呼ばれる果物由来の糖分が豊富に含まれています。
果物の種類によっても違いはありますが、豊富な甘さを持つリンゴジュースの場合、その量は30グラム使用されているそうです。

角砂糖1個(約4~5g、19cal)はコップ一杯のお水を沸騰させるだけのエネルギー、に相当するそうです。
ご飯半膳、食パン半切れ、ミカン2個分と同じだとか。

知れば恐ろしい!ジュースに入っている砂糖の量ですよね。
また、乳酸菌飲料も思っている以上に糖分の多い飲み物です。

これら糖分の多い飲み物を与えるときには飲む回数などに注意してくださいね。

以上「むし歯予防の三か条」を守って、子供のむし歯予防を促進していただいたうえで、さらに以下のことにも心を向けてみてください。

 

■カミカミ効果で良いことづくめ!

いわずと知れた「歯磨き」はもちろんですが、栄養バランスのいい食事を良く噛んで食べることもとても重要です。
よく噛んで食べることで唾液の分泌が促進されます。その唾液によって溶けだしたミネラル成分を元に戻しむし歯予防してくれると、
先にお話しましたが、軟らかいものばかり食べていたり、ストレスにより唾液が出にくくなっている子供さんも多いようです。
ストレスとむし歯なんて関係なさそうなのですが、それが大ありなんです!

よく口の中が乾き、食事中に水やお茶がないと食べられない。歯ぐきが真っ赤に腫れている、食欲がない。
などあてはまる要素があれば、お口の中にストレスがあるのかもしれません。
最近では口呼吸のせいでお口がいつも開いている状態なども多くみられますよね。
そうなると唾液の分泌量が少なくなってしまい、再石灰化が活発にできません。

また、噛むことは「キレにくい子供」を育てます。怒りや恐怖に走る偏桃体にブレーキをかけるのは前頭前野で、
その前頭前野の発達には「噛む」ことが深くかかわっていることがわかっています。
歯並びも噛むことで並びが良くなるといわれています。食事やおやつの時に良く噛んで食べられるひと工夫を!
キシリトール入りのガムやタブレットもおすすめです。(ちなみに、市販のものはキシリトール50%くらいですが、
歯科医院で取り扱うキシリトールガムやタブレットはキシリトール100%です!)

あとは、日頃の歯磨き、仕上げ磨き、歯科での予防治療(定期検診)で、PTMC(プロ衛生士による専門器具を使った歯のお掃除)や
フッ素コーティングでむし歯予防しましょう。

 

【 まとめ 子供のむし歯予防には… 】

  • 子供にミュータンス菌をうつさない
  • おやつの時間を決めて、規則正しい食生活を!(夕食前1時間は飲食しない)
  • 甘い飲み物を控える
  • 良く噛んで食べる
  • 歯の予防治療(定期検診)
  • お家ではしっかり歯磨き(幼い子には親が仕上げ磨きを)
  • フッ素やキシリトールを有効活用

まずは、お母さんや周りの大人が率先して実践。そうすれば子供も自然と身に付くのではないでしょうか。

※当院には管理栄養士が常駐しておりますので、分からないことがあれば、お気軽にお尋ねください。

 

 

 

  • 参考 子どものむし歯予防は食生活がすべて 4人の子どもに歯を磨かせなかった歯科医の話 – 著者/黒沢 誠人 編集者/幕内秀夫 出版社/風濤社
    「虫歯を防ぐ、歯並びを良くする子どもの歯を丈夫にきれいに」出版社/主婦の友社
    監修/倉治ななえ 
    こどもの歯をじょうぶにするQ&A64 出版社/小学館 監修/羽田宣裕 
    日京クリエイト カラダ健康塾 『2015年8月』清涼飲料水との上手な付き合いかた
     http://www.nikkyo-create.co.jp/kkj/pc/kkj2/kkj2.html