歯科の豆知識

「あずき」の栄養と健康パワー

実りの秋、食欲の秋というだけあって、食べたくなるものがたくさんありますよね。中でも私は「おはぎ」が食べたくなります。
このおはぎやお団子に欠かせない食材といえば、「あんこ」!

みなさんは「つぶあん」「こしあん」どちら派ですか?(私は最近つぶあん派になりました)

 

●あずきの栄養

あんこ作りに必須のあずきは、大豆や落花生などとは違い脂質の少ない豆類です。
あずきの栄養について、あずきバーでおなじみ「井村屋」のデータをお借りしてご説明していきます。

 

 

あずきは脂質がほとんど含まれず、炭水化物とタンパク質が中心となっています。「え!炭水化物多いの!?」と驚かれたかもしれません。

いまだに炭水化物=糖質のイメージが強いと思いますが、炭水化物は糖質だけでなく日本人にとって不足しがちな食物繊維も含まれているのです!

 

●あずきには食物繊維が豊富に含まれています。

その量はなんとごぼうの約3倍!

これを踏まえると、先ほどは高く見えた炭水化物の割合も、案外そうでもないのでは?と思えませんか?実際、あずきの炭水化物のうち、20%前後は食物繊維が占めているといわれていますので、むしろ積極的に食べていただきたい食材なのです。

 

ところで、あずきを食べるとき、必ずゆでたものを口にしますよね。

 

こちらは乾燥状態のあずきと、ゆでた状態のあずきを比較したグラフです。

実は、あずきはゆでると食物繊維が50%以上増加するのです!!これは、あずきに含まれるデンプン(炭水化物)が、ゆでることで人の消化酵素では消化できない成分へと変化したからなのです。

ここまでで、あずきに含まれる炭水化物の大部分は、私たちの健康に有用な成分であるということを、おわかりいただけたでしょうか?

 

●腸内環境と同じくらい大切な場所とは…?

もう少し食物繊維についてお話していきます。

食物繊維が重要視される理由はたくさんありますが、一番の理由は腸内環境を整えることです。腸の中には腸内細菌と呼ばれる菌が生息しています。

「善玉菌」悪玉菌の増殖を抑え、感染を予防したり有害物質を体外に排出したりする働きがある。乳酸菌など

「悪玉菌」腐敗物質を作り出し、老化との関わりが深い。病原性大腸菌など

「日和見菌」健康なときはおとなしく、体が弱ると腸内で悪い動きをする

この大きく3種類がバランスを保ちながら腸内環境をコントロールしています。

このうち善玉菌のエサとなるのが食物繊維で、食物繊維が不足すると腸内環境のバランスが崩れ、さまざまな不調を引き起こす原因となります。そして、最近の研究では、食物繊維不足以外に腸内環境が崩れる原因として、お口の環境の悪化が関与していることが明らかとなってきたのです。

お口から肛門までを1本の透明なホースと仮定してください。ホースの入口にホコリがたまっていると、水を流した時にホコリがホースの内部を通過して反対側から出ていきますよね。からだの入口であるお口が汚れていれば、先のホースと同じように、唾液や飲食によってその汚れが胃や腸に入っていくことになります。

つまり、歯周病などでお口の中が細菌でいっぱいの状態の方は、知らず知らずのうちに腸内にその細菌を運んでいることになるのです!腸内環境を整えることはもちろん大切ですが、それ以上に入口であるお口の環境を整えていないと本末転倒になりかねません。

 

●食物繊維以外は?

あずきの優れた点は他にもあります。

まずはポリフェノールです。オリーブオイルの回でも登場したポリフェノール。強い抗酸化作用を持ち、老化の原因となる活性酸素を無害化してくれる強い味方です。ポリフェノールというのは1種類の物質ではなく、自然界に存在するさまざまな抗酸化物質を総称してポリフェノールと呼んでいます。それぞれの食材に含まれるポリフェノールの種類や量は千差万別、食材ごとに得られる効果が異なります。

あずきに含まれるポリフェノール量は、赤ワインの1.5~2倍ほどといわれています。これだけでも十分すごいですが、あずきに含まれるポリフェノールには血糖値の上昇を抑制する効果が認められたのです!ただ、ゆであずき自体にもポリフェノールは残っていますが、水に溶けやすい性質のため、ある程度煮汁に溶け出てしまいます。煮汁ごと調理できるものや、煮汁だけ別にとっておくなどして、貴重な栄養を逃さないようにしましょう。

参考までに、煮汁を活かしたレシピをご紹介しておきますね。(「煮汁を活かしたレシピ」をクリックしてください)

次にカリウムです。

カリウムというのは、ナトリウム(主に塩分)とシーソーのようにバランスを保っている栄養素です。体内のナトリウムが増えると、シーソーがナトリウム側に傾きます。すると、シーソーの傾きを戻そうと、カリウムがナトリウムの排出を促してくれます。

塩分の取りすぎは血圧を上昇させることにつながるので、それを抑制する作用がカリウムにはあることから、高血圧予防に効果的な栄養素といわれています。

カリウムを多く含む食品として、バナナが有名なのですが、バナナ100g(約1本)に含まれるカリウム量よりも、あずき30g(大さじ3杯)に含まれるカリウム量の方が多いのです!タンパク質もしっかり取れますし、他にも鉄分やビタミン類なども含まれているので、まさに栄養満点の食材といえます!

 

●洋菓子と和菓子のちがい

そんなあずきがよく登場する和菓子ですが、「洋菓子と和菓子、どちらが健康に良いのでしょう?」と聞かれることがあります。何をもって健康に良いと判断するかによりますが、不足しがちな栄養素を補うといった意味では、やはり和菓子です。

洋菓子には、卵や小麦粉、バターなどの乳製品などを主に使用します。こうした食材は、普段の食事にもよく利用するため、足りないものを補う効果はあまり期待できません。むしろ過剰摂取に気を付ける必要があります。

一方の和菓子には、先ほどのあずきなどの豆類や米、草類を主に使用します。これらはすべて植物性食品ですから、欧米の食習慣となっている現代人にとって、口にする機会は貴重だといえます。

もともとおやつは、三食では十分に摂取できない栄養素を補うための食事の一種です。そういった意味でも、おやつに和菓子を食べるというのは理にかなっているといえますね。

ただし、和菓子も洋菓子も砂糖が大量に添加されていることを忘れてはいけませんよ!

次回は今話題の「糖質OFF」についてお届けします。お楽しみに!

 

 

 

 

 
監修:たけち歯科クリニック 管理栄養士 栗木千明
参考:井村屋「あづきについて」
      「ニューリリース2019小豆に含まれる新規糖代謝酵素阻害成分の発見!」
      「あずきと健康 便秘解消」
SUNSTAR 「歯周病と体の健康/歯周病菌が腸内環境を乱す可能性が」