歯科の豆知識

なぜアスリートの歯は美しいのか?!

オリンピックが無事に終わり、今はパラリンピックが開催されています。アスリートたちは持てる力を存分に発揮し、素晴らしい記録を残してくれています。
見ているとつい自分も力が入っていたりして、一緒になって応援している方も多いのではないでしょうか?

●乾いた口の中で何が起こっているのか

アスリートだけではなく、激しい運動をすると口で呼吸するので、お口のなかがカラカラに渇きますよね?実はこのお口の状態は、あまりよくない環境なんです。
渇いたお口の中では唾液が少なくなります。本来唾液には細菌の繁殖を防ぐ働きや、むし歯になりかかった歯を修復してくれる「再石灰化」などの作用があるのですが、お口の中が乾燥してしまうと、こうした働きが弱まってしまい、むし歯や歯周病のリスクが高くなってしまうのです。

その証拠に、一般社団法人日本スポーツ栄養協会によると、英国のエリートアスリートトレーニングセンターで行われた、2016年のリオデジャネイロオリンピックの出場または候補選手256人とプロアスリート96人の計352人を対象とする研究で、水泳を除くすべての競技で、なんとほぼ100%の人が歯周病になっていたと報告されたのです!

むし歯も全体の49.1%の方に見つかっており、より細かく競技別にみると、サッカー(61.5%)、ラグビー(61.1%)などで、ボート競技(33.3%)はまだ少ない結果でした。アスリートはお口の中の病気と闘い続ける運命だといっても過言ではないように感じますね。

 

 

●歯の病気が進行する原因

・激しい運動で口呼吸が多くなり、お口の中が乾くことで唾液の恩恵を受けにくい

・汗をかくことで唾液の分泌量が減る

・スポーツドリンクの酸が歯を溶かしてしまう(酸蝕症)

・疲れと空腹で糖分をとりがち

・間食(飲み物)は1日3回以上になるとむし歯のリスクが上昇

・練習で疲れて、へとへとになると就寝前の歯磨きがおろそかになりやすい

・オフは休養が優先で、歯科にかかるのがあとまわしになる

・激しいトレーニングによる疲労で免疫力が低下し、歯周病にかかりやすくなる

・トレーニング中、無意識のうちに食いしばって歯がすり減ったりヒビが入ったりしてしまう

・疲労回復のためにお酢やかんきつ類を習慣的に摂取することで歯が溶けやすくなる

特にスポーツをしていたら何気なくやってしまう項目ばかりですが、これらの積み重ねによって歯の病気が進行していきます。素晴らしいパフォーマンスを発揮するためにも、練習だけでなくお口の中の環境を整えることも必要なのです。
そのため、国立スポーツ科学センター(JISS)には歯科診療室が設けられており、オリンピック委員会の指定強化選手、競技団体が指定する強化選手、パラリンピックの選手はここで治療を受けることができるのです。アスリートたちの歯が美しい理由にも納得ですね!

当然ですが、運動をたしなむ一般の方やアマチュア選手にはそんなサービスはついていませんので、ご自身でしっかりとケアをする必要があります。

最近ではスポーツのために実家から離れた学校へ進学することも珍しくなく、その時期から急にお口の状態が悪化する傾向もあるようです。気を付けていただきたいですね。

 

●それじゃあ、どうしたらいいの?

「これはアスリートの話でしょう?私には関係ないわ!」と言いたくなるかもしれませんが、いえいえ、そんなことはありませんよ。

一部のトップアスリートだけに関わらず、学校の部活やスポーツクラブで練習に励んでいるお子さん、日常的にランニングを楽しんだりジムでトレーニングしたりする一般の方にとっても無関係ではありません。

ありがちなシチュエーションとともに対策方法をみていきましょう。

特にアスリートの場合、厳しいトレーニングにより組織の修復だけで手いっぱいになり、免疫力が低下しやすく、細菌などへの抵抗力が弱まる可能性もあります。細菌は風邪やインフルエンザだけでなく、歯周病も細菌で感染症なのです。

●噛み合わせを整えると人は最大限に力を発揮できる!

上記の内容以外にも、さまざまな衝撃や外傷からお口を守ったり、歯並びがよくなることでパフォーマンスも向上します。

踏ん張りが必要なアスリートは特に、歯並びを整え噛み合わせを調整することで、結果も変わってくる人がいるほどです。ですから、アスリートと歯の関係はとても深いのです。噛み合わせについては、また詳しく特集しますね、お楽しみに!

 

参考;
スポーツ栄養2020年03月23日口腔衛生でパフォーマンスを改善する アスリートの歯科疾患の実態調査

Nico 2019年5月特集「アスリートの歯を守りたい!」p.8~p.17