歯科の豆知識

肥満の人に汗かきが多い本当の理由!

 

そろそろヒーターやコタツを出された方も多いのではないでしょうか?

暖房器具を使用するときの設定温度について、こんな会話をしたことはないですか?

 

「暑すぎるからちょっと温度下げてもいい?」

「いや私は寒いからそのままにしてほしい」

いわゆる「暑がり」か「寒がり」の問題ですね。

今回はそんな暑がりさんと寒がりさんについてみていこうと思います。

 

 

●肥満気味の方は暑がりってホント?

 

ぽっちゃりした体型の方は、なんとなく汗っかきである=暑がりだというイメージを抱いたことはありませんか?

実はこれ、正しいようで正しくないのです。

 

人間は常に一定の体温を保つために、さまざまな機能で体温調節を行っています。

汗もそのうちの一つです。

健康な人の場合、体温が上昇すると、汗をかくことで皮膚の温度を下げる機能が働きます。

打ち水の原理と同じで、水分が蒸発するときの気化熱というものを利用して、体内に生じた熱を発散させています。

ところが肥満気味の人は、この機能に異常が発生します。

本来、体内の熱はすぐに皮膚に伝わっていきますが、肥満気味の方はこの間に脂肪が立ち塞がっています。

脂肪は熱が伝わりにくい性質を持っているため、体内で生じた熱が健康な人よりもたまりやすくなってしまいます。

このため体温が上昇しやすく、それを何とか発散しなければ!と体が大量の汗を出すように指示を送ることで、余計に汗が出てしまうのです。

 

肥満気味の方はたしかに熱がこもりやすいので「暑がり」といっても間違いではないかもしれませんが、正常に熱を発散できない異常な「暑がり」であるということを認識する必要があります。

 

 

●肥満気味の人は寒さに強い?

 

暑がりということは寒さには強い!というわけでもないのです。

寒さに強い=熱の産生力が高いということです。

つまり、熱を生み出す筋肉量が多いほど、寒さに耐えられるようになるのです。

ここで、肥満気味の人を考えた時に、お相撲さんのように筋肉も脂肪も多い方であれば、寒さに耐えやすい人と言えるでしょう。

ただ、ほとんどの場合、肥満気味の方の筋肉量はあまり多くないので、これに該当することは少ないと思います。

確かに脂肪には熱を通しにくいという保温効果はありますが、内側からの熱産生量が少なければ、普通の人と変わらず寒さを感じるといえます。

むしろ、肥満気味の方は寒い空気と触れる表面積が大きいため、普通の人よりも寒がりかもしれません。

 

 

●肥満のもと?白色脂肪細胞の働きとは?

 

 

食べ過ぎたり、あぶらっこいものや糖分と摂り過ぎたりすると、体に脂肪がつきやすいというイメージがありませんか。

ところで脂肪とはなんでしょうか?

 

摂り過ぎた脂質や糖は中性脂肪となって、血液中を漂っています。

この中性脂肪を白色脂肪細胞と呼ばれる細胞が取り込み、エネルギーとして蓄えます。

このとき白色脂肪細胞はきれいな球体に膨らみます。

これが体についた脂肪の正体です。

一つの白色脂肪細胞が取り込める中性脂肪の量には限度があり、それを超えてしまうと、細胞の数を増やして対処しようとします。

もともと白色脂肪細胞は人によって数が異なりますが、こうしたメカニズムもあって肥満の方はその数が多くなるといわれています。

 

じゃあ肥満になるのは白色脂肪細胞のせいだ!と悪者にしたくなるところですが、実際はそうでもありません。

 

正常な白色脂肪細胞は、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンに深くかかわっています。

脂肪を蓄えた白色脂肪細胞でないとこの働きが失われてしまうため、やせすぎの女性はホルモンバランスが乱れ、生理不順などのさまざまな問題を引き起こしてしまいます。

このほか白色脂肪細胞からは、糖尿病や動脈硬化症を抑制するアディポネクチンや、食欲と体温の調節をしているレプチンなどが分泌されています。

しかし、肥満によって白色脂肪細胞が肥大化し、その数が増えてしまうと、この機能が働きにくくなるだけでなく、むしろ高血圧の原因となる物質や糖尿病・動脈硬化を引き起こす物質を分泌することもわかっています。

 

つまり、正常な状態の白色脂肪細胞は、私たちにとって非常に有益な働きをしますが、肥満の方にとっては、さまざまな病気を引き起こしかねない厄介な存在に成り代わるのです。

 

 

●肥満と歯周病の関係

 

 

先ほどお伝えした糖尿病・高血圧を引き起こす物質は、歯周病を悪化させることもわかってきました。

歯周病自体も糖尿病や高血圧を悪化させることが明らかとなっているため、こうした負の連鎖が続くことによって、さまざまな病気が進行していきます。

 

肥満も歯周病も、日々の習慣が原因で引き起こされるものです。

早めに対処すればそれほど心配することはありません。

 

いかがでしたか?

冬も本番、体調を崩しやすい時期になっています。

体が出すサインを見逃さずに、体調管理には十分に気をつけましょう。

 

 

 

 

 

 

監修:たけち歯科クリニック 管理栄養士 栗木千明

参考:(株)ヤクルト発行の健康情報誌ヘルシスト215号 肥満に関係するだけじゃない!?脂肪細胞の正体より