歯科の豆知識

差し歯ってなに?

 

「差し歯が取れた」

「差し歯がぐらついていてうまく噛めない」

 

このようなお電話をいただくことがあります。拝見すると、差し歯ではなく〇〇だった、ということもよくあり、「え?何が違うの?」と患者様からご質問を受けます。

そこで今回は、差し歯についてお伝えしていきます。

 

●差し歯とは?

一般的に差し歯とは、人工の歯と歯根に差す支柱の部分が一体となっているものを指します。
文字通り、歯に差すように固定していくため、差し歯と呼ばれます。
むし歯などで歯を大きく失ってしまったときに適用される治療方法です。自分の歯の根っこが残っている場合にのみ可能です。
差し歯にしっかりとした定義があるわけではないので、これ以外のものを差し歯と呼ばれる方もいらっしゃるかもしれません。

 

●差し歯と間違えやすいもの

①仮歯(かりば)

仮の歯のことを仮歯と言います。
仮歯にする理由はさまざまで、すべてを解説することはできませんが、いくつかの事例をご紹介いたします。

 

・経過観察が必要なとき

比較的浅いむし歯であれば、むし歯になった部分を削って代わりの材料を詰めるだけで終了します。それが深くなればなるほど、歯だけでなく、歯を支える骨にまで感染が広がっていきます。

こうなると、感染した菌をすべて取り除くことが困難になります。治療して一時的に菌を減らせても、時間を置いてまた感染が広がってしまうことがあるのです。

こうした経過観察が必要な治療を行った際、簡易的な仮の歯を装着することがあります。仮歯をしっかり固定してしまうと、仮歯を外す時間と手間がかかってしまったり、健康な歯の部分を削ってしまったりするリスクがあるので、わざと外れやすくしています。

 

・見た目をよくするため

特に前歯を治療するときに、大きく歯を削ると見た目が悪くなってしまいます。

あらかじめ、そのような治療が想定される場合、仮歯の作成をオススメすることがあります。数回にわたって治療が続くこともあるため、一度作った仮歯は、その歯の治療がすべて終了するまで使い続けます。
失くしてしまうと、また一から作り直しが必要です。

※仮歯について、さらに詳しく知りたい方は、過去のコラム「仮歯が治療のクオリティーを左右する?」をご覧ください。

 

②かぶせもの(クラウン=Cr)

かぶせもののことを、歯科用語でクラウン=Crと言います。
差し歯とクラウンとの違いは下の図をご覧ください。

 

差し歯は人工の歯と支柱が一体であるのに対し、クラウンは歯を覆うようにかぶせる人工の歯単体のことを指します。ですので、クラウンを装着するときは、支柱を必要とするときもあれば不要なときもあります。

差し歯でもクラウン+支柱でも、どちらも大きく歯を削らないといけないのですが、クラウンと支柱それぞれを装着する方が少ない量で済むため、最近ではこの治療法がよく用いられます。

まれにクラウンと支柱が一緒に取れてしまうこともあるため、差し歯が入っていたと勘違いされる方もいらっしゃいます。

 

③インプラント

 

まずインプラントが何かについてお伝えしていきますね。

インプラントとは、医療目的のために体内に埋め込まれる異物のことを言います。骨折したときに埋め込むボルトや心臓ペースメーカーなども、インプラントの一種です。

歯科で取り扱っているインプラントのことを、一般的に「インプラント」と呼ぶことが増えたため、インプラント=歯科というイメージが定着したのだと思われます。

以降は、「歯科インプラント」と称してご説明いたします。

 

歯科インプラントは、失った歯を補うための治療に使用します。
歯は見えている部分(歯冠)以上に、骨の中に埋まっている根っこ(歯根)が長く、これによって噛む衝撃に耐えることができています。この歯根にあたるのが歯科インプラントです。
歯科インプラントに人工の歯冠を固定することで、失ってしまった歯と同じような機能と審美性の回復が可能となります。

 

余談ですが、「インプラントを入れたらMRIって撮影できないですよね?」とよくご質問いただくのですが、歯科インプラントはまったく問題ないのでご安心ください。ただし、治療方法によっては、歯科インプラント本体以外で、MRIの撮影を阻害する素材が使用されていることもあります。
ご心配な方は、担当医に確認をとった方がよいでしょう。

 

固定の方法によっては、わざと取り外しができるようになっているため、少しずつ力が加わってゆるんでくることがあります。
見た目は差し歯と似ているので、「差し歯みたいなものが取れた」とご連絡をいただくこともあります。

 

④部分入れ歯

歯を失った際の代表的な治療方法です。
歯ぐきの上にレジンなどでつくられた人工の歯をのせ、両隣の歯に針金をひっかけて固定します。

差し歯は歯根が残っている歯に人工物を差し込むのに対し、入れ歯は完全に歯がなくなった歯ぐきの上に人工物をのせるため、両者には大きな違いがあります。

特に入れ歯の場合、固定するといっても針金でがたつきを防ぐ程度です。差し歯のようにしっかりと固定できるわけではないので、噛み心地や見た目などはあまり良いとは言えません。

 

 

歯は目と同じく、一度悪くなってしまうともう元には戻せません。言い換えれば、いつだって今が一番いい歯の状態なのです。

「あのときもっと歯みがきしていたら…」と後悔する前に、一番いい状態の歯をできるだけ長く維持できるように、日々のセルフケアには十分にお気をつけくださいませ。

差し歯の長持ちには、定期的な歯科検診、正しいブラッシングやフロッシングが必要です。また、硬い食べ物や極端な温度の食べ物を避けることも重要です。

セルフケアのやり方がわからない、という方は、ぜひ当院までお気軽にお問い合わせくださいませ。

 

 

 

 

 

参考:歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020 「インプラント歯を失ったら」