歯科の豆知識

強敵!バイオフィルムを破壊せよ!

 

「バイオフィルム」ってご存知ですか?
新製品のラップの名前ではありませんよ。「バイオフィルム」は私たちの身近に存在しています。

例えば、お風呂場の排水溝や、キッチンの三角コーナーのヌルヌル。
あのヌメリがバイオフィルムです。いわゆる「粘性のある細菌膜」のことをそう呼ぶのです。

■え~!口の中にあのヌメリ?!

そして、私たちの口の中にもこの菌のかたまり「口腔バイオフィルム」はあるのです!
まさに歯垢のかたまり(プラーク)が口腔バイオフィルムの一種です。
排水溝のヌメリと同じものが口の中に?!もう、想像するだけでも嫌ですよね。

口の中の細菌には善玉菌も悪玉菌もありますが、悪玉菌は、歯がある人の場合500~700種類の細菌がいて、歯を磨かないでいると、細菌の数は、な、なんと1兆個にもなり、歯磨きした後でも1000億個は存在するそうです。
これは冗談でもなんでもなく、本当の話です。
さらに「バイオフィルム」は歯の表面に細菌が集まって、時間をかけてつくられていきます。歯磨き後8時間たったころから歯の表面に細菌が付着して仲間を増やしていきます。そこから48時間後には急速に菌が成長し、72時間後には完全なバイオフィルムとなってしまいます。

歯垢(プラーク)は歯ブラシの届きにくい箇所に発生します。発生した歯垢(プラーク)はネバネバのバイオフィルムとなって、水などでは簡単に流されず、どんどん菌を巻き込んでさらに強固なかたまりとなっていきます。
思い出してください、排水溝のヌメリも強力な除菌漂白剤や、ブラシをつかってゴシゴシしないと取れませんよね。アレと同じです。
また、歯垢(プラーク)はあっという間に歯石にもなっていきます。

■歯から全身に影響がでるかも?歯垢(プラーク)放置危険

さらに恐ろしいのが、この口腔内バイオフィルムや歯垢(プラーク)を放置すると歯周病が進み、歯ぐきが下がってきて、歯ぐきを支えるあごの骨(歯槽骨)まで溶けていきます。
そうなると最終的には、歯が抜けてしまいます。
これらの細菌は、歯周病やむし歯を引き起こすだけにとどまらず、誤嚥性肺炎や糖尿病、その他からだ全体に悪影響を及ぼすこともわかってきました。

歯周病の進行を止めるには、歯周病の細菌が喜ぶ栄養を断ち切ること。細菌は血と鉄分とタンパク質が大好物なので、歯ぐきからの出血を止めて、歯周ポケット内の歯垢、歯石、バイオフィルムを取り除くことが必要になります。

 

■「バイオフィルム」を自宅と歯科医院ダブルの効果で、バイバイ菌~

菌は下図のように、その部位によって繁殖する菌の種類もちがいます。どんな菌が、どこにどのくらい繁殖しているか、また菌が栄養をどうとっているか、炎症を起こしてるか、などでも対処の方法はかわってきます。ただ、強固なバイオフィルムができてしまうと、一般的なブラッシングでも取り除けず、歯科医院で専用器具を使って取り除いてもらうしかありません。

そこで救世主「PMTC」(プロが器具や機械をつかって行う歯のクリーニング)の登場です!

 お口の状態を細かくチェックした後、歯石を取り除き
 PMTCでバイオフィルム除去を行い、
 フッ素を塗って虫歯の予防を行います。

このように歯科医院で歯と歯ぐきのクリーニングをしていても、三ヶ月もすれば、細菌たちは繁殖力が復活!また悪さを始めてしまいます。なので、予防治療(定期検診)を欠かさず続ける事が何よりも大切です。

こうしてバイオフィルムを破壊したあとも、各自家庭での毎日の歯磨きが重要になってきます。歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目などは磨きにくいので、歯垢(プラーク)を取り除くブラッシング方法を歯科医院でしっかり伝授してもらって、ご自分でも歯垢がつきにくい口腔内の環境を整える努力を忘れないでください。

毎日のブラッシングに加えてマウスウォッシュなどの洗口液を使うのも有効です。

ここで、ちょっと注意してほしいことがひとつ。

「洗口液」と「液体ハミガキ」は別物で、使う方法も違うということ。
歯磨きをしてから使うのが「洗口液」
使ってから歯磨きするのが「液体ハミガキ」です。
商品のラベルのところに「洗口液」か「液体ハミガキ」の表示があるので、チェックしてみてくださいね。

「バイオフィルム」には洗口液の殺菌成分が届きづらいので、ブラッシングでバイオフィルムを取り除いてから洗口液を使うと効果的です。
ただし、「洗口液」を使えば歯磨きしなくても良いということではありません。洗口液は歯磨きのかわりにはならないので、誤解のないように!

■入れ歯のお手入れも丁寧に

また、入れ歯にも歯垢(プラーク)歯石がつきます。
毎食後入れ歯を外してブラシで洗ってデンチャープラーク(入れ歯の歯垢)歯石を取り除くようにしてください。入れ歯洗浄剤につけるだけではNGです。
入れ歯には肉眼では見えない細かい穴があいているので、そこに菌が貯まりやすくなります。入れ歯には入れ歯特有の菌も繁殖するので、洗浄はしっかりと行ってくださいね。

せっかく予防治療で取り除いたバイオフィルムが再び付着するのを防ぐためにも、次の予防治療までの数か月、ご自宅でのブラッシングや、洗口液とのダブルの効果で綺麗なお口の状態を保ちましょう!

 

 

参考図書 nico 『2018年8月号P.12~P.23、2018年9月号P.12~P.23』
歯科衛生士『2019年1月号 P.59』共にクインテッセンス出版(株)