歯科の豆知識

え!ホント?ワインで歯が溶ける???

甘くてちょっぴり渋みのあるブドウは大人から子供まで大人気の果物です。

小粒のデラウェアや大粒のピオーネなどその種類はさまざまですが、そんなブドウのうまみを存分に味わえる商品といえば、「ワイン」ですよね!

今年のボージョレヌーヴォの解禁日は、11月18日(木)でした。(毎年11月の第3木曜日が解禁日)11月はワイン好きには特に、そうでない方もワインの話題に触れる機会が多い季節だと思います。

そんなワインは健康に良いと評判ですが、果たして本当なのでしょうか?

 

ワインの作り方と種類

お酒には大きく分けて醸造酒、蒸留酒、混成酒の3種類があります。

醸造酒とは酵母を加えるだけで発酵させられるお酒のことで、ワインはこれに分類されます。赤ワインと白ワインの違いは、ブドウの種類の他に、製造方法が異なる点です。

収穫されたブドウは必要に応じで軸部分が取り除かれ、その後果汁を絞り出します。

この果汁を果皮や種子を除いた状態いわゆる液体の状態でプレスしてから発酵させると白ワイン、果皮や種子ごと発酵させてからプレスすると赤ワインになります。

どちらも後は樽で熟成させながら不要な沈殿物を除去やろ過を繰り返して完成です。

 

ワインは健康にいいの?

ワインが健康によいと注目されたきっかけは、ポリフェノールの多さにあります。

抗酸化作用を期待できるポリフェノールは緑茶や紅茶にも含まれますが、ワインはその2倍以上の含有量です。

以前のコラムで、実はあずきの方がポリフェノールが多いと判明しましたが、あずきとワインに含まれるポリフェノールの種類は異なるのです。
ワインにはアントシアニンと呼ばれるポリフェノールが多く含まれています。

アントシアニンはブルーベリーのCMで一時期有名になったように、目によい成分として一般的には知られています。
ですが、現在ではこのアントシアニンを積極的に摂取したからといって、視力が回復するわけではないと考える説が有力となっています。

ブルーベリーにはアントシアニン以外にも目によい成分が豊富に含まれているため、ブルーベリー=アントシアニン=目によい成分と認知されてしまったのではないでしょうか。

ひと昔前には赤ワインはアルツハイマーに効果的ともいわれていましたが、これは赤ワインを摂取したことによるものではなく、赤ワインを飲む習慣のある人たちの食生活が関係しているのではないかと今は考えられています。

もちろん、ワインにポリフェノールが多く含まれていること自体は事実ですから、カクテルやリキュールなど他の甘いお酒に比べれば十分に抗酸化作用を期待できるお酒に違いありません。ただし赤ワイン=健康とは必ずしもいえないのが現状なのです。

 

ワインで歯が溶ける?!

歯がダメになる=むし歯が原因?と考えがちですが、歯がダメになる理由は多種多様で、実際にむし歯はないのに歯が悪くなってしまうことも少なくありません。

そのうちの一つに「酸蝕症(さんしょくしょう)」があります。

 

酸蝕症とは、酸によって歯が蝕まれている状態のことをいいます。
小学校の理科の授業で使うリトマス試験紙を思い出してください。酸性だと青色の紙が赤色に、アルカリ性だと赤色の紙が青色に、中性だと色が変わらないというような実験をしたと思いますが、私たちの口の中は、この中性の状態を常に維持しています。

 

ところが食べ物や飲み物によって口の中が一時的に酸性に傾くと、②の脱灰という歯の表面が微量に溶け出す現象が起こります。
通常は③唾液の力でまた中性に戻り、一時的に溶け出した歯の表面も元の状態に戻る再石灰化が起こるのですが、生まれつき唾液の力が弱かったり、酸性に傾く時間が長かったりすると、十分に再石灰化が行われず、少しずつ歯が溶け出していきます。

これが酸蝕症の正体です。

 

でも、ご心配なく。よっぽどなことをしない限り、1日や2日では酸蝕症にはなりません。数か月、数年という長い時間をかけて、痛みもなくゆっくりと進行していきます。
気付いたときには歯が一回り小さくなっていたり、風が当たるだけでもしみるようになっていたりして、日常生活に支障が出てしまいます。

最も厄介なのは、支障が出始めてからでは治療することが難しく、むし歯でもないのに歯を大きく削ってかぶせものを入れなければなりません。

またかぶせものを入れるにしても、酸蝕症はお口全体で進行していきますから、その本数が非常に多くなってしまいます。

根本的に解決するためには酸蝕症を早期発見し、歯が残っているうちにご自身の食生活を改善する必要があります。

お口の中が酸性に傾く理由はいくつかありますが、最も単純な方法は酸性の食品を摂取することです。

お酢やレモンなどの柑橘類はもちろん、実はお酒や乳酸菌飲料も酸性の食品です。

そしてその中でも、ワインはグレープフルーツとほぼ同じくらい酸性が強いお酒です。

ワインはビールのように一気にぐいっと飲むものではなく、少しずつゆっくりと時間をかけて味わうことが多いので、他の食べ物や飲み物に比べて、長時間お口の中が酸性の状態に陥りやすくなります。

こうした理由から、ワインを日常的に飲まれている方は酸蝕症で歯が溶けてしまっている危険性が高いといえるのです。

 

ワインは飲まない方がいいの?

そんなことはありません。

長時間お口の中を酸性にすることがよくないので、だらだら飲みをやめて時間を決めたり、間に中性のもの(お茶やお水)をはさんだりするようにしましょう。

ワインを飲まない方でも、酸性の強い食品を頻繁に摂取すると酸蝕症になりますので、まずはご自身の生活習慣を振り返ってみるのもいいと思います。

特に飲食店で働かれている方や晩酌をかかさず行う方などは酸蝕症になりやすいため、お心当たりのある方は一度歯科の受診をおすすめします。

 

 

 

 

 

 

監修 たけち歯科クリニック 管理栄養士 栗木千明