歯科の豆知識

ネバネバ物質「ムチン」とは?

いきなり「ムチン」と言われてもあまり聞き慣れていない言葉でなんのことだかわからないですよね。
「ムチン」とは、唾液の成分の一つなのです。

唾液と聞くと、みなさんはどんなイメージがありますか?

「赤ちゃんのよだれの量がすごい」

「消化のために必要なもの」

「ツバって考えるとちょっと不潔な感じ」

さまざまなことを思い浮かべられたと思います。

 

4月のコラムで、アルコール依存症と唾液の意外な関係性について解説しました。

唾液に含まれる成分についても別のコラム唾液は正義の味方だ!で紹介しましたが、その中でも粘膜の保護に関わる「ムチン」は唾液以外にも含まれ、さまざまな役割を果たしてくれています。

 

●「ムチン」とは

 

むし歯などのさまざまなお口のトラブルから身を守ってくれる唾液ですが、なんとなくネバネバした液体のイメージが強いと思います。

このネバネバの正体がムチンです。

おせんべいやビスケットなどのパサついたものを食べたときに、唾液が不十分だと口の中が傷ついたり、飲み込みにくかったりしますよね?

このときに、ただ食べ物を口の中でやわらかくするだけでなく、ムチンの粘り気があることで、食べ物がひとかたまりになりやすくなって、さらに飲み込みやすくなります。

 

●ムチンの健康効果

 ムチンは唾液中以外にも、涙、胃や鼻の粘膜などにも含まれ、それぞれの場所で重要な役割を果たしてくれています。

 

・ドライアイを予防する効果

・胃炎や胃潰瘍を予防する効果 があります。

 

 


・ドライアイを予防する効果

パソコンやスマホの普及にともない、目の疲れを感じる生活が増えたのではないでしょうか?

目が乾きやすいという方はドライアイに気を付けなければなりません。

目の表面は①油層②液層の二層構造の涙に守られています。

このうち液層にはムチンが含まれているため、しっかりと水分を保持してくれることで、潤いを保つことができるのです。

ムチンの分泌が低下すると、目の周りの潤いを保つことができなくなるので、ドライアイになりやすいとされています。

 

・胃炎や胃潰瘍を予防する効果

食べ物を消化するために必要な胃酸は強力な酸性です。そのままだと胃酸の影響で胃も荒れてしまい、内臓としての機能を果たすことができません。これを保護してくれるのがムチンです。ムチンの分泌が低下すると、上記の理由で胃が荒れてしまいます。

このほか、肝臓や腎臓、大腸などの重要な器官にもムチンが分泌されており、それぞれの粘膜を保護してくれています。

また鼻や口からのウイルスを侵入しにくくする効果もあるとされています。

 

●ムチンを摂取するためには?

 

 

よく、オクラやナガイモなどのネバネバ成分=ムチンと紹介されているページを目にしますが、植物性のネバネバ成分と、このムチンはまったく別物であるという説が有力です。

なので、仮に植物性のネバネバ食品を多く食べたとしても、このムチンの分泌量が変化するかどうかは不明です。

ムチンを食べ物から摂れるとすれば、ぬるぬるでお馴染みの「ウナギ」や「ドジョウ」、中華料理で目にする「ツバメの巣」です。

 

 

フランスやイタリア料理で定番の「エスカルゴ(かたつむり)」のぬめぬめ成分もムチンだといわれています。

これらを普段から口にすることはなかなか難しいので、気になる方はサプリメントを服用することも検討されたらいかがでしょう。

これは余談ですが、一時期大流行した「カタツムリのクリーム」は、カタツムリの排泄物「スネイルムチン」が使用されているようです。
美容大国の韓国から流行したので、発祥の地は韓国だと思っている人も多いかもしれませんが、実は1980年代にチリが発祥の場所なのだそうです。
チリのカタツムリブリーダーたちが自分たちの手が柔らかいことに気づいて「もしやカタツムリか?」となり、そこから出来上がったのがチリ産のカタツムリ、スネイルムチンのクリームなのだそうですよ。

 

●植物性のネバネバ成分にはどんな効果があるの?

具体的なことは食材によっても異なりますが、水溶性食物繊維が含まれていることが多いです。食物繊維についての詳しい解説は別コラムでも行っているので、興味のある方はそちらもご覧ください。
ムチンの有無はともかく、身体にとって大切な栄養素が含まれていることには違いありませんね。

 

●この時期おすすめの食材はナガイモ!

ナガイモの旬は秋~冬ですが、一部の地域では春掘りされるものもあります。冬の間土の中に埋まっているため、さまざまな成分が凝縮された濃厚な味わいになるのだとか。
せっかくの味わいを存分に活かすためには、生のままいただくことが一番でしょう。

特にビタミン類は熱に弱かったり、水に溶けやすかったりするものもあるので、そのままいただくことのできる食材は貴重といえます。

 

●イモなのに生で食べても大丈夫?

ナガイモは他のイモ類と違って生で食べられます。

イモ類はでんぷんと呼ばれる成分が多く含まれているのですが、消化にとても時間がかかるため、大量に食べるとお腹を壊してしまいます。

ジャガイモなどのイモ類を調理して食べるのは、こうした理由があるからです。

これに対し、ナガイモにはでんぷんを消化してくれる酵素が含まれており、他のイモ類と比べて生で食べてもお腹を壊しにくいという性質があります。

ちなみに、ナガイモは皮ごと食べることもできます。

土や雑菌はしっかりと洗い流し、ヒゲが気になる場合はバーナーなどであぶると口当たりもよくなりますよ。和え物にしても良し。すりおろしてとろろご飯にしても良し。

これからの季節、寒い冬を乗り切ったパワーあふれるナガイモで体調を整えて過ごしましょう。

 

 

 

 

 

監修:たけち歯科クリニック 管理栄養士 栗木千明
参考:わかさの秘密 トップムチン 
Women’sHealth: 皮膚科医が解説! スキンケアに有効な「カタツムリのムチン」って?一聞の価値あり。